大学職員はスキルが付かない?現役職員が市場価値とキャリア戦略を徹底考察!

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ゆにすけ
ゆにすけ

「大学職員って、安定してるけどスキルが付かないんでしょ?」
「事務作業ばかりで、市場価値が下がるのが怖い……」

大学職員への転職を考えている方から、こうした声をよく聞きます。

特に30代の方は、仕事の中心人物として活躍されている方も多いため、「よりホワイトな職場環境を求めてはいるけど、とはいえ今後のキャリアのことも心配・・・。」といった悩みはつきものです。

結論から言うと、その不安は、半分正解で、半分間違いです。

確かに、ただ漫然と「大学職員の仕事」をしているだけでは、驚くほどスキルは身につきません。そのような状態では転職市場で「何もできない人」と評価されるリスクは現実にあると思います。

しかし、働き方の意識(マインドセット)を変えるだけで、大学職員という環境は「最強のキャリア形成の場」に変わります。

今回は、現役大学職員である私が、大学職員の市場価値と、生き残るための具体的なキャリア戦略について考察します。

そもそも、キャリアとか市場価値とか気にする必要があるの?

本題に入る前に、

そもそも、大学職員になってゆるふわホワイトな環境でぬくぬくと働きたいから、キャリアとか市場価値とかどうでもいいんだけど。

みたいな考えの方もいるかと思います。一つの考え方としてそれも全然ありだと思います。

ただ、時代が変わってきてそういうわけにもいかなくなっているので、多少なりとも今後のキャリアを検討したうえで大学職員という仕事を選択する方がおすすめです。

【状況】

  • 大学が変革を求められる時代になり、大学職員の仕事も、事務作業の確実な遂行に加えて業務の改善・変革が求められるようになってきている。
  • DX化推進により、将来的な単純事務作業の価値は下がっていく。(とはいえまだまだ大学のDXは全然進んでおらず、年単位で先の話になると思いますが)
  • 採用においても、対応力や変革力のある人材を求める傾向に変化してきている。

なぜ「大学職員はスキルが付かない」と言われるのか?

ここから本題ですが、まずは、耳の痛い現実を直視してみましょう。なぜ「スキルが付かない」と言われるのか。構造的な要因は主に3つあります。

1. ルーティンワークの繰り返しになりやすい

大学業務の多くは、年間のスケジュールが決まっています。入学式や卒業式、学籍登録や成績登録、入試、奨学金申請、新卒・既卒採用に決算などなど。そんな仕事を見てみても、大半のものは「昨年度と同じようにミスなく回すこと」が最優先されます。

つまり、「思考停止」していても仕事が回ってしまうのです。これが楽で心地よいと感じて大学職員を続けているような人もいますが、これでは新しいスキルは身につきません。

2. ジョブローテーションで専門性がリセットされる

特に規模の大きな大学では、3〜5年で部署異動というサイクルでジョブローテーションしていることが通常です。「経理」から「学生支援」、研究支援から「広報」へ、といった全然関係ない仕事に移ることが当たり前のように起こります。

仕事に慣れた頃に異動になるため、「何のプロフェッショナルなのか」が曖昧なまま年齢だけ重ねるという、ある意味”日本らしいサラリーマン”へと陥りやすいのです。

最近は日本企業でも雇用の在り方や専門性の磨き方などにメスが入り、キャリアアップのプロセスが変わってきている企業も多くありますが、大学はまだまだ昔ながらの状態が続いていることがほとんどです。

3. 「教員」が主な意思決定権者なので受け身になりやすい

大学の主役はあくまでも学生と教員です。とりわけ経営・運営側で考えると多くの場面で教員が主役となります。そのため、職員はどうしても「事務方」という立ち位置で仕事をすることがほとんどです。

大学で何か決めていく際の意思決定権も教授会にあることが多く、職員は「言われたことをやるだけ」「資料をまとめるだけ」といった受け身の姿勢(御用聞き)になりがちなことも多々あります。(それはそれで、プレッシャーも少なく仕事がしやすいという側面があったりもしますが。)

こうした環境で主体性のない仕事を続けていると、スキルが付かない状態になってしまいます。

受け身の職員にならず、どのように市場価値を高めるか?

上記ような構造に流され、受け身で仕事をしている職員の市場価値はおそらくかなり低いでしょう。

自分の周りにも受け身のまま年齢だけ重ねてしまい、正直、「作業はできるけど、仕事はできないなぁ」と思ってしまう人がたくさんいます。大学の外に出た瞬間、通用しないだろうなぁと感じます。(自分もそうならないようにしなきゃな、と日々気をつけています。)

では、こうした環境において市場価値を高めていくにはどうすれば良いでしょうか?

私の答えとしては、ジェネラリストとして、コンセプチュアルスキル(概念化能力)を磨いていくことだと考えています。

コンセプチュアルスキルとは?

複雑な情報や事象について、本質を見極め理解できる能力のことです。論理的に物事を考えられるロジカルシンキングや、状況に臨機応変に対応する柔軟性などのスキルを含みます。

つまりは、何かに特化した専門性のあるスキルというよりは、業界問わずあらゆる課題に対応できるスキルのことです。

詳しくは、「コンセプチュアルスキル」でウェブ検索してみてください。

大学職員の環境は、学外でも役立つ専門性の高いスキルはつきにくいですが、どんな業界でも役立つコンセプチュアルスキルは磨きやすい環境だと思っています。

特に以下の3つは、コンセプチュアルスキルの要素を高めるために役立つ、他の組織よりも優れたポイントです。

1. 課題発見(「前例」を疑う)

大学職員は例年行うルーティンワークが多いと書きましたが、裏を返せば「無駄な前例」の宝庫です。笑

例えば、「なぜ紙で提出させるのか?」「なぜこの承認フローが必要なのか?」といったことを日々疑問に感じて思考を巡らせていけば、業務フローのボトルネックを見つけ出す力を磨くことができます。

意外と、日々の小さな事柄に関してでも、こうした疑問をしっかり課題として捉えていける人は少ないので、特にDX化が進む現代においては、他の業界でも重宝される一つの要素になります。

2. プロジェクトマネジメント(改善の実行・完遂)

課題を見つけたら、それを解決するための「改善活動」を行いましょう。

・・・といっても、民間企業でバリバリやっている人からしたら、「そんな時間ないよ」と思う方も多いかと思います。

でも、大学職員ならできます

大学職員のルーティンワークは、一連の流れを一度把握してしまえば大した業務量ではありません。もちろん職場や繁忙時期にもよりますが、民間企業にいたときよりも格段に改善活動に充てられる時間を確保しやすいです。

これは私の実体験ですが、閑散期は3か月ほど毎日数時間は改善に充てられていました。

こうした環境を作り、業務改善プロジェクトに充てていけば、立派な実績を積んでいけます。特に、改善活動は1人では完遂できないものが多いので、周囲の人と協力しながら進めていくことで、自然とチームや組織のマネジメントスキルにもつながるでしょう。

3. 高度な調整(ステークホルダーマネジメント)

大学で物事を進める際、やはり主役になってくるのは「教員」です。業界特有のステークホルダーとして、多くの業務で調整が必要になってきます。

教員と職員の関係性や教員個人の特徴など、考慮する点が多かったり、学部によって状況が大きく異なったりと、民間企業よりも環境は複雑に感じます。(民間企業でも難しい面はありますが、大学の方が、言葉を選ばすに言えば「めんどくさい」ところだと思います。)

そうした環境で、教員をはじめとした数多くの関係者と合意形成を図り物事を前に進める経験は、民間企業のそれよりハードな場面も多いなと私自身も日々の業務の中で感じており、ここで身につけられるスキルは、他業界でも通用する高度な折衝力・調整力ではないかと思っています。

大学職員が描くべき2つのキャリア戦略

上記のように、大学職員の仕事・職場の特徴を活かしながら働けば、以下のように学内でも学外でもキャリアを選択していけるはずです。

パターンA:大学業界でのキャリア

今の大学業界は変革期です。少子化で「黙っていても学生が来る」時代は終わりました。従来の「事務屋さん」ではなく、改革を推進できる職員は、どの大学も喉から手が出るほど欲しい人材です。

大学職員として蓄積した業界の知見に加え、着実に磨いた改善スキルや調整力があれば、学内で出世していくことができるでしょう。もし管理職にはなりたくないといった場合でも、通常業務も改善業務もできる人材として活躍していけるはずです。

また、同じ大学業界の中でのステップアップをしていくキャリアとして、規模や特徴の異なる大学に移って新たなチャレンジをすることもできると思います。

パターンB:異業界への転職

もし、また何らかの理由で大学業界を離れる選択をすることになっても、「改善の実績」と「調整力」があれば転職は十分に可能だと思います。(年齢によっては管理職経験が望ましいかもしれませんが。)

大学職員として「事務をしていました」ではなく、 「複雑な利害関係を調整し、組織の課題を発見・解決して業務効率を最大化したプロジェクトマネジャー」のように自身を定義できれば、民間企業においても改めて活躍できる場が広がると思います。

結論:「改善できる力」を日々積み上げていこう

大学職員は「スキルがつかない」のではなく、「スキルをつけようとしない人」が淘汰されるだけです。

従来のような「言われたことをミスなくやる」だけの職員で生きていくのは、正直これからは厳しいでしょう。大学側も、そういった職員を抱える余裕はなくなりつつあります。

しかし、「自ら課題を見つけ、周囲を巻き込んで解決する」という働き方ができるなら、大学職員という仕事は、安定した基盤の上でチャレンジを積み重ねられる優れた環境です

「大学職員=市場価値が低い」というレッテルは、あなたの行動次第で嘘にしましょう。


以上、今回は大学職員の市場価値とキャリア戦略というテーマで記載しましたがいかがでしたでしょうか。これから大学職員を目指す方にとって少しでも参考になれば幸いです。

また、大学職員に興味がある方・転職を考えている方に向けて、転職の流れなどを示したロードマップの記事も用意しています。転職を考えている方は、こちらの記事も併せて読んでみてください。

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ゆにすけ
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現役大学職員
30代・未経験から大学職員に転職した現役大学職員です。前職はITのベンチャー企業で管理職もやってました。

現在は転職によりワークライフバランスを整えることができ、二人の子どもの育児に積極的に励んだり、空いた時間で英語の勉強に取り組んだりもしています。

「現職でバリバリ働いてきたけど激務に疲れて転職を考えている」
「今よりワークライフバランスを充実できる職場環境に行きたい」
といったお悩みを持つ主に30代のみなさんへ、大学職員への転職方法や、職員のリアルな仕事内容・働き方などを紹介します。
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